「ちゃん」

    「何?綾子ちゃん」

    「トイレの儀式って知ってる?」




    が聖創学院に転入して来て1日。
    既に文芸部の皆とは打ち解けた関係になった。
    今はとくに仲の良い日下部 綾子と同じ授業で、隣の席だ。




    「・・・・どんなの?」

    「学院の何処かのトイレの扉を35回ノックして、“花子さん遊びましょう”って言うの。
     そしたら返事が返ってくるんだって!」

    「へぇ・・・面白そうだねぇ」

    「友達が一緒にしない?って言ってきたんだけど・・・一緒にしない?」




    紛れもない、召喚の“儀式”。
    は少し眉を顰めながら、綾子の話を聞いた。




    「良いよ、やってみたい」

    「本当!?なら放課後ちゃんの教室行くね!」

    「うん、分かった。待ってる」




    ニコニコと笑顔を見せる綾子。
    それとは対照的に、何処か不安げな表情を見せる
    しかし綾子はそれに気付くことはなかった。



    あの“儀式”は危険だわ・・・
    現に私が『召喚』されたんだから。
    今度は何があそこに『召喚』されるか分からない。
    気をつけないと。















    夕焼けに染まりだした放課後。
    綾子は約束通りを向かいに来、友達3名とトイレへと向かった。
    話題溢れる半ば、例のトイレへ着いた。
    そこは校舎4階。あまり使われない階の1番奥に存在した。
    少し古びれており、何が出ても文句が言えないような雰囲気だった。




    「うわ・・・今にも何か出そうだね・・・・・・」

    「確か、1番奥が使用禁止・・・っと、大当たり」




    はそのトイレに、少しばかり嫌悪した。
    自らが『召喚』された場所であり、後ろの闇が大きくなるのを感じた。



    ―――・・・・・早く此処から逃げ出してしまいたい!!!




    「大丈夫?ちゃん」

    「え?あ、平気平気。ただ気味悪いなーって・・・」

    「それは分かるかも・・・レイちゃん、ほんとにするの?」

    「当たり前でしょ!その為に来たんだからさッ」




    この“儀式”をしようと呼びかけたのは、レイと言う女らしい。
    長い茶色の髪、今風の女の子だ。
    そしてレイはノックを開始した。



    コンコンコンコンコン、コン―――・・・



    1回1回のノック音が、異様な程トイレに響き渡る。
    その度に、にしか見えない闇が深まり、広がっていく。
    必ず、何かが『召喚』される。間違いなく。
    が『召喚』されたばかりだ。闇は収まりきっていない。

    このトイレは今、異界と隣り合わせに位置している。



    コンコンコンコンコン・・・・・「花子さん、遊びましょう」



    一時の静寂。少し荒い呼吸が耳障りにさえも聞こえる。
    皆、使用禁止と張り紙されたトイレを注視した。




    「・・・何も、起こらないね」

    「そう、だね・・・・・・」




    数十秒待ったが、何も聞こえたり起こる気配は全くなかった。
    を含める全員が、安堵のような溜息をついた。

    だが、









    カタリ、









    何かが動く音がした。
    その音に、全員が反応した。




    「ねぇ、今の・・・何の音?」

    「まさか・・・トイレの中から・・・・・・?」




    焦り、恐怖、怯え。とてつもない感情が駈け巡った。
    しかし、




    「ゴメン、今私がポケットの中でちょっと鏡弄ったの。驚かせてゴメン・・・」

    「何だー!吃驚したじゃんかぁ」

    「本当だよぉ!良かった〜」




    は咄嗟に嘘を吐いた。
    無論その音は、が発したモノではない。明らかに『異界』からの音だ。
    何かが、此処に『召喚』された。
    大きな闇、溢れんばかりにトイレの個室の中で渦巻いているのが見えた。



    ―――・・・・・急がないと!誰かに感染してしまう!!




    「早く此処から出よう?何か恐くなって来ちゃった」

    「そうだね、出よう出よう」




    の意見により、全員がそのトイレから出て行った。
    取りあえず一安心だが、感染を完全に免れたかは分からない。
    此処には近付かない方が良い、そう思った。


























    「やぁ、“ニセモノ”さん」

    「魔女さん・・・・・・?」

    「召喚の“儀式”をしちゃったんだね」

    「・・・えぇ、もう何かが『召喚』されちゃったみたいだけど」

    「ふふふ、此処からは貴方に任せるわ」

    「空目君に相談しようかなー・・・」




    暗闇の何処かで話を進める詠子と
    楽しそうに笑みを見せる詠子とは対照的に、は焦りの表情を見せていた。
    考えてみれば、自分が『召喚』されていなければ、先ほどの儀式で何も『召喚』されることはなかっただろう。
    責任を感じていた。




    「魔女さんって、変わり者だね」

    「よく言われるわ」




    微笑む2人は、何処かへ消えていった。







     ***






    「空目君、相談があるんだけど。“異界関係で”」



    朝の文芸部部室。そこには空目とあやめ、そしてしか居ない。
    ここぞとばかりに昨日のことを話そうと思ったのだ。




    「何だ?」

    「どうにも何かが『召喚』されたみたい」

    「どういうことだ?」

    「トイレの“儀式”は知ってるかしら?全てを話すわ」




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