時として鳥は、鳴かずに生涯を終えるものが居るらしい。
鳴けないカナリア
「・・・亜紀ちゃん、どしたのそのカナリア」
「部室の前に居たんだ。怪我してるみたいだから手当てしただけ」
「カナリアがこんな所に・・・」
部室に入ってみれば、亜紀の前に包帯を小さく巻かれたカナリアが居た。
は驚いて声を掛けるが、亜紀は意外と冷静だった。
「この鳥さ・・・拾ってから1度も鳴かないんだ」
「偶にいるんだよ、一生鳴けない鳥」
「そうなの?」
「うん。生まれた時から声帯を持ってなくて鳴けないの」
「へぇ・・・」
亜紀は思った。
自分にも声帯がなければ、と。
「声帯は持ってた方が良いと私は思うな」
「え?」
「だって、声がなければこうやって話せない」
その言葉に、亜紀は先程考えたことを捨てた。
鳴けないカナリア程、哀しいモノは無い、と。
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