逆さ時計











  「・・・あの時に戻りたいわ」

  「・・・・・・どうした?」




  丁度3時間目の授業中。
  空目とは2人共々サボリの為、文芸部部室に潜んでいる。




  「あの時こうしていれば、って後悔すること無い?」

  「特にない」

  「ふふ、恭一らしいわ。私はたくさんある・・・未練がましいのよ」

  「“戻る”ことなど、今の科学では出来る訳がない」

  「知ってる。でもね?あの時キスしておけば良かったって思うの」




  その言葉に、空目は少し驚いたように目を見開いた。
  不敵に笑う
  無言の時が流れていった。




  「そんなの、今でも出来るだろう?」

  「そうね。じゃぁ、あの時に戻りましょうか」




  はそう言うと、部室にある正方形に近い時計を、机の上に持ってくる。
  そしてそれを、逆さに置いた。





  「好き、恭一」

  「あぁ」





  唇がそっと重なった。

  願わくば、逆さ時計。
  あの時のような、2人きりの甘い時間に戻して。







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