「魔女」




  時は夜半。
  既に回りの家に灯りは亡い。
  ざわり、と風が吹く中、2人は対面した。




  「やぁ、“小さな灯り”さん」

  「・・・・・です」

  「ふふふ、まだ嫌なの?魂の名前で呼ばれるの」

  「嫌じゃない人は居ないと思いますよ」

  「そうかなぁ?」




  “小さな灯り”、それはの魂の名前。
  どんな暗闇に押しやられても、必ず灯りを点ける存在。




  「それよりどうしたの?こんな暗闇の中」

  「・・・うるさくてね、闇と貴方自身が」

  「相変わらず耳が良いんだねぇ」

  「どうも」




  異界に対する耳が発達している為、詠子が居るだけでもうるさく感じる。
  あまりにも異界が近すぎて。
  は、中々寝付くことが出来なかったのだ。




  「仕方ないなぁ・・・今日は何処かに行くよ」

  「有り難いわ」

  「ふふ、じゃぁね」




  無邪気に手を振る詠子を横目に、は黙って帰って行った。
  闇の続く道を。

  だが、1つの電灯がパチリ、と音を立てて点いたのは誰も知らない。









  夜はお静かに。









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