空目が消えてから、3日が経った。
  聖創学院は一時休校となったが、私はあの裏庭に居る。



  ―――・・・空目の姿を捜して。















       M e m o i r e


















  「ねぇ、空目・・・何処?・・・・・・何処にいるの?」



  愛した人。愛して愛してやまなかった人。
  空目も、愛してくれてた。
  なのに、なのに、消えた。
  哀しくて、悔しくて、仕方がなかった。

  だから捜し続けるの。

  きっと何処かに居るはずだから。
  私に黙って、何処かに行っちゃうはず無い。
  毎日、この裏庭の池に通い続けた。
  そして夜になるまで、ずっと待ち続けた。



  「空目・・・空目・・・・・・好きだよ、大好きだよ・・・」



  どうしようもないくらいの“喪失感”。
  空目の存在が、あんなにも大きかったなんて思わなかった。

  だから大きすぎる欠落。

  きっと名前を呼べば答えてくれるはずだから。
  私はぽつりぽつりと、空目の名を呼び続ける。



  「・・・此処に、居たのか?」



  話しかけてきたのは、待ち望んだ人ではなかった。
  空目の行方を知る唯一の人物、村神 俊也。
  大怪我をおってながらも、此処に来たらしい。
  私は目を伏せた。



  「空目は・・・空目は何処なの・・・・・・?知ってるんでしょ?教えてよ・・・」

  「・・・・・・・・・空目は、“異界”に還った」

  「嘘だよ、そんなことするはず無い・・・」

  「嘘じゃない、本当だ」



  涙が零れた。
  もう一頻り、枯れるまで泣いたはずなのに。
  それでも涙は溢れ続けた。



  「どうして・・・どうして止めなかったの・・・?」

  「あいつが、あいつの意志が望んだからだ」

  「分かってるよ・・・・・・でも、でもッ!」

  「・・・空目は、お前の記憶の中に居るだろ?」



  村神は私に近寄り、白い封筒を1つ手渡してきた。
  宛名はなかった。
  でも裏側を見ると、名前があった。




  『空目 恭一』と。




  「こ・・・れは・・・・・・・・・?」

  「空目の家で見つけた。前に言ってたんだ。これは『宛』だ、と」



  私は夢中になってその手紙を開け、読んだ。
  そこには見慣れた空目の綺麗な字。
  そして苦しい程、本当な現実。
  最後まで読めたのが、奇跡だった気がする。



  「有り難う・・・・・・」

  「空目は死んでない。ただ・・・世界が違うだけだ」

  「うん・・・逢えるよね、きっと何処かで」

  「そのはずだ」













    様へ



    お前に手紙を書くのは初めてだ。
    どうしても、言葉に出来そうになかったから全てをこれに書こうと思う。

    俺は神隠しに攫われ“異界”に足を踏み入れた。
    この時点で始まって、既に終わっていたんだ。
    俺は必ず、“異界”へと還ってしまう事になっていたんだ。
    そしてこれをが読んでいる頃、その日が来たんだ。

    許してくれ、とは言わない。
    でも許して欲しい。

    自ら“異界”行きを志願し、お前に黙って行ってしまったことを。
    でもこうするしかなかったんだ。
    しなければ、にも被害が及んでしまう。
    だから最後に護らせて欲しかった。すまない。

    お前が俺に告白してくれた時、本当は断ろうと思った。
    こうやって、寂しい思いをさせるくらいなら断ろうと。
    だが出来なかった。
    好きすぎてたまらなかったから、つい断ることが出来なかった。
    こんな身勝手な自分に今更だが、嫌悪してしまう。

    今まで言ってやれなかったな。

    、愛している。
    そして、本当にすまない。

    だが俺はお前の傍にいる。いつだってそうだ。
    世界が違うだけで、隣に居るんだ。

    いつか必ず逢える。どんなカタチでも、必ずだ。


    今まで、有り難う。



                                    空目 恭一













  今でも、この手紙は持っている。
  いつか空目に逢える日までずっと。

  だってこれは、大切な“記憶”であり“思い出”だから。












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