俊也は、背が高い。

















          足下の影―――

















  「とーしやっ、一緒に帰ろう?」

  「あぁ」



  ニコリ、と笑みを見せながら文芸部の扉を開いた
  時は既に夕刻。
  そろそろ帰る生徒も多い。







  「ねぇ俊也、陸上部に入らない?もうすぐ大会があるんだー」

  「わり、入る気はねぇんだ」

  「ちぇーっ、良い人材なのになぁ」



  は女子陸上の部員だ。
  それなりの成績を出す女子陸上だが、それと正反対な男子陸上。
  ここ数年上位入賞もしたことがない。
  何度か今までに村上を誘ったことがあるが、どれも玉砕。
  運動神経が良いのに勿体ない、とは悪態をつけた。



  「まぁ良っか。それよりさ、俊也って背高いよね」

  「そうか?も充分高いだろ」

  「そう?でも高いのって結構憧れる」

  「・・・足下、影見てみろよ」



  村神は指で地面を指しながら言った。
  そこには夕日によって、長く伸びた自分たちの影があった。



  「うぁ、長っ!」

  「充分高いだろ?」

  「これは長いって言うのー。高いと長いは違いますー」



  口を尖らせながら村神の顔を見た。
  村神はクスリ、と苦笑した。



  「じゃぁ長いうちに帰ろう?何かちょっとだけ俊也に気か付けた気がする」

  「そんなもんか?」

  「うん、そんなもん」



  2人の足下の影は、手が繋がり今も尚長さを保っていた。








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